2007-01-01から1年間の記事一覧

老紳士

私は今、囲われている。 月に1回の約束を守れば30万を振り込んでくれる 老紳士と出会った。 その老紳士はどことなく、本当の父に似ている。 幼い頃の記憶は曖昧で、はっきりとどこが似ているとは 言えないが、その人といると泣いたり笑ったりが自然にできる…

強さ

人間は強い。 もう、歩けない、もう生きていたくない、 もう、無理、もう、何もしたくない、 もう、誰にも会いたくない、 もう、死にたい、と強く願い、 弱弱しい自分を撫でて、自己愛を高めても、 再び歩き出し、死んだりせずに、何かをしていて、 どこかの…

花 花 花

青い花

頭上

少しまぶしい。

散歩

醜い

義父が家にいる。 仕事から帰ると、テレビの音がする。 お笑い番組の中の笑い声に一呼吸置いて 義父が笑う声が、低くうなる。 上司の車で送られて帰宅すると、今日もまた、 部屋にはテレビの中の笑い声と、義父のうなるような醜い笑い声が充満し、 床にはつ…

花の命

いつも会社の帰りによるスーパーに姉がいた。 私はとっさに身を隠した。 姉は小さな子どもをだっこしながら ショッピングカートを左手で不器用そうに フラフラと押していた。 カゴにはレトルト食品とスナック菓子が山のように積まれ、 その隙間に、明らかに…

水漏れ

給湯室の流しの蛇口を壊した。 どんなに蛇口をひねっても水のしずくが落ちるので、 強く締めようと力を入れたら蛇口がゴリッととれた。 手のひらにすっぽりと包めてしまう丸みを帯びた 小さな金属の固まりが思ったより重くて、 その重量感を右手で味わった。…

電源

新しい職場の上司は私にセクハラをした。 私は抵抗しなかった。 新しく入ってくるバイトにセクハラをするのが その40を目前に控えた男の唯一の楽しみなのだろう。 男がねっとりとした目つきで私の体をみていたのは 初日から知っていた。 3日目に食事に誘われ…

沈黙の今

コンタクトの目が乾き、 目薬をさしたらマスカラが黒く頬に流れた。 鏡に映る青白い自分が黒い涙を流している。 私はそれをしばらく見つめていたかった。 携帯が鳴り、着信画面を見て電源ごと携帯を切った。 昨日仕事の面接を受けた。 派遣会社の事務員のバ…